ワインを飲む際に、何か一言語らなければならないような風潮が、現在の日本にはあります。
 抽象的で不明瞭な言葉に始まって、重いだの軽いだの、香りが何だとか、色々言う方もいますけれど、コーヒーやビールを飲む際、同じような表現を使っている場面に出会う事は稀です。
 はたして、白いご飯を食べて、魚の味がすると言うだろうか。豚肉を食べてピーマンの青臭さがあると言うだろうか。
 本来、これらの表現は、それを仕事とする人間(コックやビア・テイスター、コーヒー・テイスターなどを含む)の仕業であり、飲み手がそれを真似する必要はありません。
 ただ一言、「美味しい」と言う以上の褒め言葉、「もう一杯欲しい」と言う以上の賛美が何処に存在するでしょう。
 それはワインだけでなく、誰かの作ってくれる料理にも同じ事が言えるのではないでしょうか?


 その時に大事なのは、表現する事ではなくて、何かを感じてあげる事です。

 そして、欠点ではなく、長所を見つけてあげよう。人間を評価するのと同じく、けなすのは簡単な事です。
 人と同じように、出会えた事を喜びに感じてあげましょう。
 もしも、そのワインの事、その嬉しさを他人に伝えたいと思った時、初めて表現する意味が生まれて来るのではないでしょうか。