前回も書いたように、視覚や事前情報、知識は味覚を大きく狂わせます。
 例えば、何種類かのワインを用意し、複人数で試飲する。この時、1種類だけ、有名銘柄の空き瓶に安いワインを詰め替えておく。
 すると、ワインの知識のある人間の大半は、有名銘柄に高得点を付けたのである。
 種明かしをしてみると、知識がなかった人間は素直に味で採点しているのに対し、知識のあった人間は「やっぱり低い点は付けられなかった」という意見から「美味しいと思って飲んでいたので驚いた」というものまで。
 中には、「他のワインは全部目の前で開けているのに、1本だけ既に空いていたのでおかしいとは思ったが、気付かなかった」とか、「色が高級品にしては薄いと思ったけど、疑わなかった」など。
 他から得る情報に比べると、味覚はどうにも危うげな感覚であることに違いないようです。