ワインの原料は葡萄であり、葡萄は土地により育まれます。
 このため、ワインこそは天の恵み、といった言葉をそこかしこで耳にする事でしょう。
 葡萄は、穀物よりも天候や土地の影響を受けやすい果実です。ですからこそ、こういった言葉が横行する訳で、それ自体は紛れもない事実でしょう。
 しかし、これは半分しか当たっていません。本当の天然には、人の手が加わらないからです。
 ワインだけに言える事ではありませんが、農作物は人の努力の結晶でもあるのです。
 剪定をはじめとし、畑の水捌けを良くしたり、土を入れ替えたり、あるいは葡萄そのものを品種改良する。これこそ、人の手なくしては出来ないこと。
 近年は「自然食品」や「有機栽培」といった言葉が氾濫していますが、それこそが人の努力なくして出来ないモノ。放置しただけでは、農耕足りえません。
 土地の良さにかまけては、素晴らしいワインは出来ず、その逆も然り。大河ドラマではありませんが、「天地人」が揃わなければなりません。そしてそれらは、土地や作物に惜しみない愛情を注いでいるからこそ、可能な業なのです。
 ですからどうか、ワインを飲む時、土地や天候、そして葡萄を作り上げた人の愛情を感じて欲しいのです。